僕がその遊びと出逢ったのは、小学校高学年の頃。
友人宅に遊びに行くと、炬燵をぐるりと囲んだ友人たちがサイコロを振っては、何やら紙に書き込んでいた。
「何してるの?」
「あ、一緒にやる?」
という事で、僕も輪に加わる事となった。
「どうすればいいの?」
「まずね、この紙を…」
手渡されたコピー用紙には何やら項目が印刷されていた。
「プレイヤー名」、「ダンジョンマスター名」、「キャラクター名」、「性格」、「クラス」、「レベル」、「アーマークラス」、「ヒットポイント」、「ストレングス(強さ)」、「インテリジェンス(教養)」、「ウィズダム(知恵)」、「デクスタリティ(敏捷性)」、「コンスティテューション(強靭さ)」、「カリスマ(魅力)」、etc…。何だろう?
友人はサイコロを三つ手渡しながら、
「これを振った合計を『能力値』の項目に順番に書いてって」
「うん」
言われるがままにサイコロを振る。
「…出来たよ」
「どれどれ…。うーん、全体的に低すぎるなあ。もう一度振り直して」
やり直して再度見せると、
「うん、まぁまぁかな。ストレングスとインテリジェンスが高いから、ファイターかマジックユーザーかエルフが選べるけど、どれがいい?」
エルフ?いすゞのトラックか?マジックユーザー?
「ああ、ファイターは戦士。マジックユーザーは魔法使いの事だよ。エルフは戦士と魔法使いの中間みたいな感じだね」

…これが僕とテーブルトークRPGの馴れ初めだった。
システムは『Dungeons & Dragons』(新和 / TSR)。今では「クラシックD&D」と呼ばれているゲームだ。
会話によって進行するRPGである、というか『Wizardry』や『Ultima』といったコンピュータRPGより、むしろこちらが先に生まれた。
ゲームマスターと呼ばれる進行役がプレイヤーに状況を伝え、プレイヤーは受け持つキャラクターに合った行動を宣言し、その行動の成否判定をしながら進めていく。

僕はこの『D&D』 の他に『ソード・ワールドRPG』(富士見書房)、『指輪物語ロールプレイング』(ホビージャパン / Iron Crown Enterprises)、『ウィザードリィRPG』(アスキー)、『WARES BLADE』(ホビージャパン)、『Tunnels & Trolls』(社会思想社 / Flying Buffalo Incorporated)、『RuneQuest』(ホビージャパン / Chaosium Inc. / The Avalon Hill Game Company)、『ロードス島戦記コンパニオン』(角川書店)、『ビヨンド・ローズ・トゥ・ロード』(遊演体)辺りで遊んでいた。
中学から高校の頭くらいまではすっかりハマっていたのだが、高校生で色気付いてすっかりオタクカルチャーから足を洗ってしまったので、気が付いた頃にはテーブルトークRPGという文化そのものがすっかり下火になってしまっていた。
自分に素直になれた30歳くらいの頃に大人の財力で買い戻して以来(何せ絶版書籍なのでどれもプレミア価格になっている)、宝物になっている。

テーブルトークRPGはまだまだマイナーなジャンルではあるけれど、結構面白い遊びだと思う。