「一番好きなファミコンソフトは?」と訊かれたら、迷わず「ウィザードリィのシナリオ1!」と答える。

あれは小学6年の冬頃だったか。『ファミコン通信』の広告ページに心を奪われたのは。
当時の僕はファンタジーRPGが好きで好きで堪らなくて、パソコンを持ってもいないのに、ゲーム・アーツ著『ウィザードリィ モンスターズマニュアル』(MIA)を読んではニヤニヤする子供だったので、ファミ通に載っていた「ファミコン版 ウィザードリィ」の広告は神の啓示に等しいものであった。

ファミコンの主なユーザー層は小中学生が想定されていたのだと思うが、この『ウィザードリィ』は明らかに「オトナ」の雰囲気を醸し出していた。
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黒地のパッケージには赤い『Wizardry®︎』のロゴがあり、緑色のドラゴンが描かれた実にシンプル極まりないもの。
ソフトのデザインも真っ黒なソフトに黒地のシールで、全く子供に媚びていない。
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このパッケージだけで「こいつァホンモノだ!」と痺れたものだった。

自キャラもパラメーターのみで表示される。
グラフィックなど無い。

プレイヤーはまず、「訓練場」でキャラクターを作成する。
名前を決め、人間、エルフ、ドワーフ、ノーム、ホビットからなる種族を決め、善、中立、悪のいずれかの性格を決め、種族の特性が表された力、知恵、信仰心、生命力、素早さ、運の6つの能力値にボーナスポイントを割り振り、能力に応じた戦士、魔法使い、僧侶、盗賊、司教、侍などの職業に就かせる(上級職である君主、忍者は最初に得られるボーナスポイントでは足りない為、転職する必要がある)。

そうして作ったキャラクターたちは、冒険者たちが集う「ギルガメッシュの酒場」に屯している。
そこで1〜6人のパーティを編成し、「町外れ」にある迷宮の入り口から地下に潜る。
当然、武器や鎧、盾、兜、籠手などを装備しておくのも忘れてはならない。

迷宮の中には大魔導師ワードナに召喚されたモンスターどもや野盗と化した冒険者の成れの果てが巣食っており、レベルの低い冒険者は恰好の餌食である。
最初の頃は1、2回の戦闘で引き上げる羽目になるが、レベルが上がれば徐々に捜索範囲が広げられる。

死んでも「カント寺院」や高レベルの僧侶、司教による呪文で蘇らせる事が出来るが、しくじれば灰(ASHED)となり、更にしくじれば消滅(LOST)する。
復活のショックなのか、蘇生したキャラクターは生命力の値が1下がる。
この値が0になっても、キャラクターは消滅する。

また、年齢も設定されており、老衰により消滅する事もある。
宿屋に泊まると、一週間分歳を取る(馬小屋は無料で一日分しか歳を取らない。馬小屋ではHPは回復しないが、呪文の使用回数は回復する。その為、僧侶や魔法使いのみ馬小屋に泊まらせ、HPは僧侶の回復呪文で回復させる方法が一般的)。
転職すると全ての能力値が種族特有の基本値まで下がり、年齢が5歳上がる。
頻繁な転職は命取りとなる。

こうしたデメリットを踏まえ、他のゲームに比べて、プレイヤーは慎重になる(しかし、このデメリットこそが、このシンプルなゲームに深みを与えているのだ)。

パーティが全滅すると、死体はそのまま迷宮内に放置される。せっかく育て上げたキャラクターを諦めるか、それとも回収班を作成して死体を回収するか。
昔のドラマのタイトルじゃないが、人間誰しも「ウチの子に限って…」と楽観的に考えている。6人パーティを組んだら、そのパーティばかりを育成してしまうのが人情だ。しかし、ウィザードリィでは、それは愚行である。並行してメインパーティの死体回収班を育ててこそ、ウィザードリィのベテランプレイヤーと言えよう。
時間経過と共に、全滅したパーティは損壊していく。装備品や金銭が奪われたり、死体が減っていたりするのである。
迷宮の下層へ行けば行くほど、モンスターはそれに比例して強くなる。
下層で全滅したパーティの死体回収班もそれなりの実力が無ければ務まらない。また、パーティは最大6人まで、という事を考えると少人数で迎えに行かないと、回収出来る死体の数が減る。
さりとて確実に全滅したパーティの元へ辿り着く為には、ある程度の人数は必要な訳で、かなりシビアな選択を迫られる事になるのだ。

アイテムは「ボルタック商店」という店で売買される。
冒険者たちが迷宮でアイテムを拾って売らない限り、在庫は増えない。
レアアイテムである村正(Muramasa Blade!)や聖なる鎧(Garb of Lords)、手裏剣(Shurikens)などは、モンスターを倒した後に出てくる宝箱から、ごく稀に手に入るものである。
迷宮の階層が下がるほど、手に入れられるアイテムのレア度が上がる。
つまり、アイテムのコンプリートを目指すならば、迷宮の下層で強敵を殺して殺して殺しまくるしか無い(このエントリーは物騒極まりないな)。

また、宝箱は迷宮内の扉を開けた際に遭遇するモンスターしか持っていない為、大抵は最下層である地下10階の玄室で強敵を斃しまくる事になる。
地下10階ともなれば、毒や麻痺はおろか、石化や首を刎ねて即死させるクリティカルヒット、レベルを下げるエナジードレインなど、恐ろしい特殊攻撃をしてくるものばかりである。モンスターの放つ一撃一撃が恐怖なのだ。
また、最高レベルであるレベル7の呪文を使いこなす敵も多くいる為、わずかな気の緩みが全滅に繋がる。

しかし、このアイテム蒐集やレベル上げが、このゲームの中毒性を高めている事もまた、事実である。

Wizardryはモンティ・パイソンやマザー・グースなどの引用やパロディが多いゲームで、正統派ファンタジーというよりは、むしろギャグが強めな内容だったのだが、日本では正統派ファンタジーとして捉えられていた為、イメージのギャップが存在する。
例えば、かなり強い武器に「Blade Cusinart」がある。日本版では「カシナートの剣」と訳しており、攻略本や小説などでは“伝説の名工・カシナートが鍛えた剣”とされていたが、これはアメリカの家電メーカー、クイジナート社のフードプロセッサーが元ネタで、本来のBlade Cusinartは4枚の刃の付いた棒状の武器である。回転する刃によって敵を倒す武器がカシナートの剣の正体だと知って幻滅した日本のファンは多かったと思う。

正統派ファンタジーとしてのウィザードリィを描いたものとしては、ベニー松山・著『隣り合わせの灰と青春』が筆頭に挙げられるだろう。
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ファミコン版のシナリオ1のノベライズとして、最高の一冊だと思う。
続編の『風よ。龍に届いているか』もファミコン版ウィザードリィのシナリオ2の素晴らしいノベライズである。
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矢野徹『ウィザードリィ日記』も名著である。
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今でこそ当たり前になったゲーマー的な妄想がいい。

また、TRPGも出ており、その名もズバリ『ウィザードリィ ロールプレイングゲーム』(ASCII)という。
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グループSNEがデザインしたTRPGで、独自の設定として「エセルナート」という世界が創られた。
この設定は後にPS版の『リルガミン・サーガ』に引用される。

『ウィザードリィ』にハマった著名人の一人に、映画監督の押井守監督がいる。
押井監督は『機動警察パトレイバー』内で散々ウィザードリィのパロディを繰り広げ、『Avalon』というオリジナルの映画では、映画の設定そのものがまんまWizだった。
Avalonのノヴェライズである『灰色の貴婦人』もいい小説。

久し振りにファミコン版ウィザードリィ、やりたいな…。

※この記事は以前書いた【RPG】Wizardryに加筆修正したものです。